顕微鏡にはさまざまな種類がありますが、その中で金属表面の観察を得意とするのが金属顕微鏡です。金属は照明の光を反射するため白飛びが起こりやすく、通常の顕微鏡では観察できません。金属顕微鏡はそれを可能にし、金属材料の開発・研究や金属部品の製造工程における不良品検査で広く重宝されています。
本記事では金属顕微鏡の概要と、生物顕微鏡や実体顕微鏡との違い、そしてメリットやデメリット、主な用途について解説します。
金属顕微鏡とは?
金属顕微鏡とは、不透明で光を反射しやすい金属表面の観察に特化した顕微鏡のことです。金属、セラミックスなどの金属材料、半導体などの表面構造、メッキ、アルマイト断面などの皮膜観察に適しており、自動車、船舶、半導体などの分野をはじめ、さまざまな研究・開発場面で活用されています。
金属は光を透過しないため、観察対象に当てた光は反射してしまい、これにより通常の顕微鏡ではうまく観察できません。金属顕微鏡は観察対象に光を当て、その反射光のコントラストを利用して表面構造を観察する仕組みです。
金属顕微鏡には上から観察するタイプと、下から観察するタイプがあります。対象を上から観察する「正立型顕微鏡」は、半導体ウエハや電子部品などの表面構造の観察で主に使用されます。一方下から観察する「倒立型顕微鏡」は、大きめの試料や厚みのある試料の観察に有効です。
生物顕微鏡や実体顕微鏡との違い
生物顕微鏡と実体顕微鏡は、いずれも光学顕微鏡に分類され、細胞や微生物など微小な対象物の観察に用いられます。ただし、この2種類の顕微鏡は「観察対象に光をどのように当てるか」や「像の立体感の有無」といった点で金属顕微鏡とは違いがあります。
生物顕微鏡は、透過光を利用して観察を行う顕微鏡です。主にスライドガラスに載せた薄い試料に下方から光を当て、その透過光で形成された像を観察します。細胞内部の構造などの詳細な観察に適していますが、不透明な試料には対応できません。この点が、反射光を用いて金属などの不透明物を観察できる金属顕微鏡との大きな違いです。
一方、実体顕微鏡は対象物の表面に上方から光を当て、立体的に観察できるのが特徴です。構造は双眼で、左右の視野に微妙な差があることで奥行きのある実像として捉えることができます。肉眼でルーペを使って見るのに近い感覚で観察でき、金属や樹脂、電子部品など不透明な対象にも使用可能です。
ただし、実体顕微鏡は倍率が低めに設計されており、表面の微細な傷や構造を詳細に観察するには限界があります。高倍率かつ高解像度で金属表面の組織や微小な欠陥を確認したい場合は、金属顕微鏡がより適した選択肢となります。
金属顕微鏡のメリット
金属は光を当てても透過せず、反射するため生物顕微鏡のような一般的な顕微鏡では白く光ってうまく観察できません。しかし、金属顕微鏡は反射光のコントラストを利用しているため、金属材料の微細構造を高解像度で観察できるメリットがあります。これにより、合金の結晶粒界、相分布、析出物などの詳細な分析が可能となり、材料の特性を理解するのに役立てられています。
またフィルターが豊富で、目的に合わせて最適な状態で観察できるため、微小な欠陥や異常の発見など製品の信頼性に関わる精密な観察ができることもメリットです。
金属顕微鏡のデメリット
解像度が高く光を反射しやすい金属面の鮮明な観察が可能な一方で、被写界深度が浅い点がデメリットです。被写界深度が浅いとピントが合う範囲が限られ、不具合がある箇所を見落とす可能性があります。
また、金属顕微鏡で観察するためには、観察対象に対し包埋、研磨、エッチングなどの工程を踏んで観察できる状態に加工しなければなりません。これには手間も時間もかかり、対象によっては破壊検査となってしまうため製品そのものの検査には適用できないケースもあります。
金属顕微鏡はあくまで対象の表面を観察に適用したもので、材料の内部構造といった三次元構造を観察することは困難です。このように金属顕微鏡は適用範囲が限られている点がデメリットといえるでしょう。
金属顕微鏡の主な用途
金属顕微鏡は自動車や航空機、船舶など、さまざまな製品に使用される金属材料の観察、製造工程における検査や品質管理に使われています。軽量性や剛性を高めるなど、使用目的に合わせたより良い材料を作り出すためには、研究・開発が欠かせません。金属顕微鏡を用いれば、金属材料の加工や熱処理などによる変化を評価・判断するのに役立ちます。
また自動車部品の製造工程では、熱処理後の焼入れ深さや硬化層の均一性を確認するために金属顕微鏡が用いられます。製品の品質管理や不良解析にも不可欠で、微小な欠陥や異常を発見するために金属顕微鏡は欠かせません。
まとめ
金属顕微鏡は通常の顕微鏡では観察が難しい金属表面の観察に適した顕微鏡です。
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